サラワクの闇

ずっとずっとサラワクで起こっていること

 マレーシアのボルネオ島北西部にあるサラワク州。多様な野生動物や希少な植物類が、緑豊かな熱帯林に守られ生息していることで知られています。この自然あふれる美しいサラワクの地で、ずっとずっと昔から起きている『闇』をみなさんはご存知でしょうか。

 この半世紀の間に、サラワクでは約90パーセントの熱帯林が破壊されています。金儲けのために過剰伐採を許可した権力者の存在、それに反対する者への暗殺がありました。そして今なお、先住民への暴力的な土地収奪や過剰な伐採は続いています。
 このことに関して、『日本に住む私たちに何の関係があるの?』と思った方もいるかもしれませんね。
実はサラワクの熱帯林で伐採された木材の相当数が日本に輸出されるのです。中国に輸出されるものもありますが、その多くは加工され最終的に日本にやってきます。
ホームセンターでもよく見かける『合板コンパネ』に『合板フローリング』、そしてまた『合板型枠』という製品などに姿を変えて、私たちの生活に深く根差しています。


 だから、熱帯林の破壊は決して私たちと無関係ではありません。

熱帯林と合板

 熱帯林は地球の気候を維持する上で非常に重要な役割を持っています。熱帯林は『地球の肺』であると言われています。酸素や炭素の循環を調節する機能があり、『生物多様性を育む役割』を果たしています。熱帯林が失われると『温暖化の加速』につながり、私たちの未来にも悪影響が出ます。
 また、生物多様性のある熱帯林から新薬がつくられ、難病やがんなどの薬になったりしています。このことからも、熱帯林破壊は遠い海の向こうで起きていることだと無関心にとらえてはいけないことなのです。

 今もなお、現地の巨大な木材企業たちがサラワクで乱伐採しています。彼らには『地球の肺』と呼ばれているかけがえのない熱帯林が、ただのお金にしか見えません。だから、そこに住んでいる先住民を力づくで追い出して、躊躇なく伐採していきます。木を切れば切るだけ儲かるので、彼らは笑いが止まりません。

野放しの伐採

 また、彼らは新聞社を所有しているので、彼らに都合の良いウソを流します。事情をよく知らない人はそのウソを信じてしまいます。
 そして、森林破壊で本当に困っている先住民たちの声は小さすぎて消されてしまうのです。
 時々、熱帯林を守るために大きな声で立ち上がる人もいますが、彼らはそのような人を脅したり、殺したりします。彼らはお金や権力があるので何をしても捕まりません。
 みんな怖がって何も言えなくなってしまいます。だから、彼らは安心して伐採を続けます。

 ある先住民の村では、このような出来事がありました。
 彼らは村人のライフラインでもある大切な橋を故意に破壊するという蛮行にでました。
 村には陣痛が始まり、救急車が必要な妊婦さんがいたのですが、橋が壊されてしまったために救急車が村にたどり着くことができませんでした。
 その結果、妊婦さんも産まれたばかりの赤ちゃんも命を落としました。

現地での犠牲

 サラワクでは、多くの先住民が悲しみの『涙』を流し、また『血』を流し、そして尊い『命』が奪われています。そのような現実を経て、サラワクの木材は日本へ運び込まれるのです。
 世界的にSDGs(持続可能な開発目標)が注目されている昨今、日本の企業たちも例外ではありません。
 しかし、どれだけSDGs とうたっていても、現実に『闇』で起こっていることから目をそむけ、向き合おうとしなければ自社のイメージアップを狙った飾り事にしか過ぎません。
 このままだとサラワクの熱帯林は消えてなくなってしまうでしょう。そして、日本や現地の巨大企業は次の熱帯林に手を伸ばしていくのです。